ブロックチェーンという言葉に騙されないために
背景
ブロックチェーンとは
ブロックチェーンとビットコインの関係
(※より詳細かつ正確な説明はBitcoinの仕組みに譲ります。)
金融業界での活用の動き
概略
- 新たなブロックの生成は即座に行われるわけではないので取引完了は即座にはわかりません。またブロックが生成されたとしても十分に時間が経つまでは覆される可能性があり取引完了を信頼性を十分高めるまでには時間を要します。
- オフラインで取引リクエストの生成はできますが、ブロックチェーンに記録するまでは取引の成功が保証されないため、厳密にはオフラインの取引をすることはできません。
- すべてのノードが取引結果を検証する必要があるため、ブロックチェーン自体には高速になる要素はありません。
- ブロックチェーンは仕様上すべての検証用ノードで取引の記録を残す必要があるため、副次的な効果として耐障害性の強いシステムができますが、既存の分散データベースでも同様に取引の記録を残すことで同様の耐障害性が得られます。
- すべての検証用ノードが取引の記録を持つため取引の数と検証用ノードの数を同時に増やすことはできません。
- 取引が偽造できないのはブロックチェーンによるものではなく、電子署名によるものです。
2016 年 12 月号の情報処理学会誌について
特集0 編集にあたって
特集初っ端から、ブロックチェーンの話をしてる中、突然の人工知能推し。筆者の悲痛の叫びが聞こえる。 pic.twitter.com/ovOE9zWej7
— いもす (@imos) November 21, 2016
特集1 ブロックチェーンの基本と発展
ブロックチェーンの耐偽造性や公開性を考慮すると、「秘匿性はあまり求められないが、偽造されては困るもの」などが検討の対象になるだろう。たとえば、公的機関が行う登記や事業所登録などがある。
耐障害性に着目すれば、万が一止まると大きな影響が出るシステムの利用には良いだろう。
特集2 対談:ビットコインコア開発の現場とは
(質問者)スクラッチから作り直すほうが、楽では?
(開発者)いえ、それは危険です。分散されたノードが合意できず、分岐する可能性があり、検証するのが大変です。
特集3 ビットコイン改善提案 最前線
特集4 ハイパーレジャープロジェクト
ブロックチェーン技術を含んだ分散型台帳技術は中央管理者が存在しない、改竄しにくいデータ管理の仕組みである。
パーミッションレス分散型台帳の優位性は中央管理者が不在であるため、検閲困難なシステムとなることにある。しかし、そのままでは欠点が多くて、社会のニーズの解決には向いていないところが多い。(中略)これらの内容からパーミッションド分散型台帳技術が最もエンタープライズに相応しいものとして注目されている。
特集5 ブロックチェーンの分散台帳を利用した電子投票による集合知の構成
「ブロックチェーン」が従来のデータベース技術で実現されている電子投票システムよりも優れていることを明らかにする。
理想的な電子投票の要件は、以下のようなものである。
(1)投票資格の検査と本人確認(2)投票の一意性(二重投票の防止)(3)投票内容の正確性(4)投票内容の改変不能性(5)投票内容の検証可能性と追跡可能性(6)システム自体の信頼性(7)個人の投票内容と方法の秘匿性(8)柔軟性(複数の投票手段が選択できる)(9)利便性(情報リテラシーが不要(10)試験可能性(仕様を投票者が確認できる)(11)透明性(投票に関する全行程の可視化)(12)システムの運用コストが合理的
(2)(3)(5)(6)(10)(11)(12)は、ザ・ブロックチェーンの特性である「対象的な非集中管理監査」によって実現できる。また、(4)は「絶対中立的な非可逆記録」によって実現できる。
従来のデータベース技術を核とする電子投票システムを採用した場合、「信頼できる第三者」を仮定しない電子投票システムで、(2)(3)(4)(5)(6)(10)(11)を実現することは、事実上不可能である。
- (2)投票の一意性(二重投票の防止) … 役所の電子署名と投票者の公開鍵の組み合わせを用いれば実現可能です。
- (3)投票内容の正確性 … 電子署名により実現可能です。
- (4)投票内容の改変不能性 … 投票者が電子署名をして公開サーバに書き込んだ時点で他の人からも投票したことが検証できるため投票内容は変更不能になります。
- (5)投票内容の検証可能性と追跡可能性 … 記録されているかどうかは公開サーバに存在するか否かで確認ができます。
- (6)システム自体の信頼性 … 公開サーバの信頼性に依存しますが、複数のクラウドサービスを用いたときの可用性はビットコインネットワークを利用するより高いと考えられます。
- (10)試験可能性(仕様を投票者が確認できる) … 記録されている電子署名を集計するだけであり追試は容易です。
- (11)透明性(投票に関する全行程の可視化) … 公開サーバに書き込むことにより透明性は確保できます。
- (12)システムの運用コストが合理的 … ビットコインの取引手数料が小さく設定されていますが、取引量が少ないために無視されているだけであり、データを永久に保存し続ける必要があるので結果的にビットコインの方がコストがかかると考えられます。