金利裁定取引実験

2016年2月公開

金利裁定取引実験

価格差裁定取引はスプレッドを常に監視しなければならず個人で行うのは難しいですが,金利差裁定取引は金利の変動が非常に緩やかなため個人で行うことも可能です.これを実証するため実際に金利差裁定取引を行いました.

ニュージーランドドルを用いた金利差裁定取引

2月24日時点での1万通貨あたりのスワップポイントは
  • DMM FX … 売 (-38円/日) 買 (38円/日) スプレッド (1.7銭)
  • ヒロセ通商 … 売 (-90円/日) 買 (60円/日) スプレッド (1.4銭〜)
で,1NZドルは約78円です.

1万通貨をヒロセ通商で買い,1万通貨をDMM FXで売った場合,スプレッドにかかる実質的な手数料は往復で約310円です.1日あたりの金利差は22円で15日間以上持ち続けられれば収支がプラスになり,現物に対する年利は0.51%となります.レバレッジ目標を10倍に設定した場合,年利5.1%を実現することができます.

実証実験の結果

下図は30万通貨の両建て取引を行い,24日分のスワップを得た結果を表しています.スワップ差による利益は16,520円(注1)となり,スプレッド差による損失12,000円(注2)を超えているのがわかります.これを保持し続けると1日あたり660円分のスワップ差を得ることができます.
図 1: 金利裁定取引による損益状況
注1 … 1万通貨あたりのスワップ差は取引開始時は18円/日であったのが,22円/日に変化したため19では割りきれません.
注2 … 取引時にタイミングを誤ったものがあったため平均価格差は2.5銭になってしまったため,理論値である9,300円よりも損失が大きくなっています.

証拠金の移動

入出金にお金がかからないことが確認できましたが,DMMは最長で出金に2日営業日要するため想定以上の急激な変動時に一時資金を用意するか決済を行う必要がある可能性があることがわかりました.

証拠金計算の違い

DMM は瞬間的にはレバレッジ50倍まで許容する(22時時点で25倍以内であるかどうかを確認する)一方,ヒロセ通商は瞬間的なレバレッジ25倍も許容しないため,ヒロセ通商の方に少し多めに証拠金を入れた上で毎晩差額を確認する戦略が最もリスクが低いと考えられます.

出金可能額の問題

変動が発生し片方のレバレッジが大きくなった時にはもう一方に証拠金を移動することでレバレッジを一定にすることができますが,DMMの場合,決済をするまでは利益分を証拠金として扱うことができないため,出金可能額は(最初に預けた金額)-(必要証拠金額)に制限されてしまい,目標レバレッジが10倍の場合は当初より10%程度変動した時に一部を決済し再度ポジションを作りなおす必要がある問題がありました.ただし通常は10%の変動が起きるのは半年程度かかるため,その間に十分金利差を得ることができると考えられます.

取引時のスプレッド削減

まとめて取引を行った場合にはタイミングの問題が生じやすいため,双方の価格を確認しながら出来る限り差額が小さいタイミングで10回に分けて行ったところ,ほぼ期待値通りの平均1.5銭差(最小0.6銭,最大2.6銭)でのポジションを作ることができました.同様の方法で決済もできると考えられます.